劇団☆新感線「髑髏城の七人」

ヘドウィグ千秋楽でお祭り騒ぎしたい気持ちも正直あったのだけど、ここはやはり新感線に操をたてて厚生年金へ。いやー、新国版と全然別物じゃないですか! 俄然良くなってました。若干セリフが聞き取りづらいところはあったけど。奥行きを使いすぎて席位置によって見え方がまったく変わってしまう新国とちがって、やや平面的なだけにどの席位置でもそれほど大きく見え方が違わないであろう厚生年金版のほうが、ハコとの相性がいいんじゃないかと少し思ったり。シルエットもキレイに映えていて、オープニングのタイトル場面や最後の7人のところがとても良かった。ラストの演出の変更もなるほど、これはイイ。そして水野美紀ちゃんが見違えるように良くなっていたのに驚き。目が覚めるような殺陣でした。古田さんもちょっとスマートになったのか、「久々にカッコイイ古田さんを観た!」と、心の中で軽く感涙(もっとも帰ってから97年版DVD観てしまったら「やっぱりこの頃はかっこ良かった」と別の意味で泣いてしまったけど)。詳しい感想はまた後日。

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

前回みてからチケットを買い足し、2回目。楽しかった。そして泣いた。金と時間があったら何回でも通っていたなあ、多分。前に観たときよりヘドウィグとイツァークの間にもうちょっと愛情が感じられる気がした。前回はスタンディング人口が少ないのと後ろに気をつかって立てなかったという不完全燃焼感が少しあったのだけど、今日は最後列だったので心おきなくスタンディング。ラストの「Lift up your hands」で煽られる前から手を挙げてる人が多かったから、かなり熱心なヘドヘッドが多かったのかも。あー。今更ながら映画版のカラオケナイト行ってみたかった。またやってくんないかなぁ。そして舞台版、せっかくだからクアトロあたりでオールスタンディングのライブ版でやってくれないかなぁ。楽しいと思うんだけどなぁ、クアトロナイツ。
二回みたらラストの解釈でいろいろ考えてしまった。詳しくはまた後日。

Oi-scale/僕AREA←Spectators[B.A.A]PRODUCE「ヒミズ」

Oi-scaleは何作か観ていて世界観に共感するところもあり、今回も期待していたのだけど。うーん、正直、今回はちょっと不満。今まで役者が脚本に追いついてないんじゃないかと思っていたのだけど、今回これだけの役者を呼んでおいて使いこなせなかったところを観ると、演出の力不足はいなめない気がする。セリフの言い回しやテンポなど、もうちょっとしっかり作り込まないと、舞台空間がゆるゆるの隙だらけで集中力が続かない。役者ひとりひとりが自分自身のセリフを自分のテンポで言っているだけのように聞こえてしまって、それぞれが有機的に結びついている気がしなかった。明石スタジオでいつもの役者ならあのくらいでも満足してしまうけど、ラフォーレでこのメンツなら、もうちょっとしっかり世界を作り込んでくれないとなぁ。まぁ、なんだかんだ言って次に期待してはいるのだけど。

http://www.oi-scale.com/himizu/himizu_fs.html
原作:古谷実  脚本・演出:林灰二
出演:村田充 つぐみ 山中崇 ぼくもとさきこ 林灰二 佐伯新 金子清文 川崎賢一 星耕介 杉山薫 千原浩史千原兄弟)/清成慎太郎 清水慎太郎 中村太陽 トモヒカン 太平 山下純 露口健介 吉田海輝 吉川マサカズ 加藤芙実子 笹田留美

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

いやー参った! 三上博史さんはすっかりヘドウィグそのものでした。もちろんジョン・キャメロン・ミッチェルとは別物なんだけど、また別のヘドウィグ像をきっちり造り出していて良かった。一瞬あのメイクと衣装に引いたモノの、すぐにそんなこと気にならなくなる。っていうかだんだん可愛く見えてくる。心配だった訳詞もさほど違和感なし(英語のままの部分も多いし)。こりゃリピーターが多い作品だという理由もわかる。映画よりもシンプルに話が伝わる部分も多く、終盤はちょっと胸打たれました(最後のイツァークの衣装もちょっとどうかと思わないでもないけれど……まぁこれもおいといて)。これもいくらでも深読み可能というかなり奥深い劇構造だったんだとあらためて感心。思わずチケット追加。詳しくはまた後日。

あ、ちなみに、これから観る方、「ミュージカル」と思わずに見に行くほうがいいです。「バックバンド付きの一人芝居」または「MCが長いライブ」くらいに思って見に行ったほうがいいかも。(正確に言うとイツァークはちょっと絡んでくるから一人芝居というわけでもないのだけど)。知らずに見てちょっと面食らってる人もいたようなので。あと、前から3列目くらいまでのお客さんのところには多少液体が降ってきたりするので、汚れを気にしなくていい服装で行くべきかと(ビニールカッパもおいてあったみたいですが)。

アマデウス

脚本は文句なしにいい。暗転ナシでスピーディに展開する演出もいい。ただ、心配していたとおり、サリエリ役の幸四郎さんのセリフがまるで呪文だ! ブレスの位置が変だし、抑揚にメリハリがなくて「一生懸命セリフを聞き取る努力」を強いられる。うあー、誰か新劇の人を連れてきて、お願い! もうこの際四季の人でも我慢するから! 詳しくはまた後日。

新国立劇場オペラ「マクベス」

正直、さすがの野田さんもオペラ劇場の広さとオペラの楽曲はもてあましたのかなーという印象。あまり「野田秀樹ならではの演出」というのは感じなかった。まぁ演目が演目だから、「ド派手で豪華絢爛なオペラ!」にはならないだろうとは思っていたけれど。なんというか、空間の使い方はもうちょっとやり方があるだろうと思った。せっかくあれだけの機構がある劇場なのに、一幕→二幕くらいしか大きな転換はなく、あとは同じセットをずっと回したり動かしたりしながら使い回していく感じ。うーん……。しかも、舞台のかなり手前にセットを置いてその前で大人数の人を動かすから、全然奥行きが生きないし、せっかく総勢150人(だっけ?)という大人数を動かしても、狭い場所でこちょこちょやってるようにしかみえないから、なんというか非常にもったいない。中劇場の時はあんなにめいっぱい使えたのに、なんでオペラ劇場ではこの程度しかやらないの? という印象。
っていうか、バーナムの森のあのショボさって何? コクーンで蜷川さんがやったマクベスのほうがなんぼかインパクトあった気がするんですが。いくら楽曲の制限で「バーナムの森が動けるのはほんの一瞬」だとしても、だからこそ見せ方はもうちょっと考えて欲しい気がするんですが。なんかプラスチックの書き割りっぽい板を持った人々が舞台上を横切っていくだけだなんて。あれじゃ「バーナムの森が動いた!」とは誰も思えないんじゃないかと。
ひとことで言えば、オペラの魅力であるスケール感がない!と思った。
まぁその代わり、地味とはいえきっちり歌を聴かせる演出ではあるから、目新しくはないけど作品を壊してはいないと思った。「研辰の討たれ」の時に「これは歌舞伎じゃない」と批判した人も、「これはオペラじゃない!」とは言わないんじゃないかと思ったり思わなかったり。まあ、私もオペラについては初心者なんでオペラファンの視点からの感想は解らないけれど。しかし楽曲のテンポという制限があると、野田さんらしい舞台のスピード感というのはなかなか出すのが難しいんだなーと思ったりもした。
魔女役=骸骨の人々の振付は、もうちょっと面白くなったんじゃないかなぁ。あの手の長さを生かしたムーブメントは他になにか手がありそうな気がしないでもない。途中で出てくる大きな骸骨さんたちは「Nightmare before Christmas」のジャックみたいでちょっと可愛い(下記URLの舞台写真参照)。


http://www.nntt.jac.go.jp/season/s226/s226.html

  • マクベス :ヴォルフガング・ブレンデル
  • マクベス夫人 :ゲオルギーナ・ルカーチ
  • バンクォー :妻屋秀和
  • マクダフ :ミロスラフ・ドヴォルスキー
  • マルコム :井ノ上了吏
  • 侍女 :清水華澄
  • 医師 :大澤建
  • マクベスの従者 :大森一英
  • 刺客 :篠木純一
  • 伝令 :塩入功司
  • 第一の幽霊 :青山貴
  • 第二の幽霊 :高原由樹
  • 第三の幽霊 :直野容子
作品解説
野田秀樹オペラに進出。マクベスを捕らえる魔力の深層に光を差す。
現代演劇の最先端を疾走する演出家、野田秀樹。劇団夢の遊眠社で圧倒的な支持を集め、劇団解散、留学後はNODA・MAPにおける舞台創造、さらに近年は一人芝居、多国籍俳優による『RED DEMON』での英国本格デビュー、そして歌舞伎座の新作歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』(第1回朝日舞台芸術賞グランプリ受賞)に『野田版 鼠小僧』と、止まることを知らず活動の幅を拡げている鬼才が、ついにオペラ演出に挑みます。
マクベス』はヴェルディが初めてオペラ化を成し遂げたシェイクスピア演劇。『ナブッコ』など愛国心を鼓舞する傑作を連発していたヴェルディ前期、それまでの形式の枠を超え、ドラマとしてのオペラという新境地へ踏み出した記念碑的作品でもあります。全曲を通じて原作と同じく暗鬱で劇的緊張感溢れる音楽が満ち、予言、野心、疑念、陰謀、錯乱と極限へと追い込まれていくマクベス夫妻の心理を描ききる重厚な作品です。
独特のスピード感に奇想天外な美術、演劇的アイディア満載の舞台創りの一方で、人間が古来もつ魂の叫びに迫ろうと試みてきた野田秀樹が、廻り来る死者の影に怯え破滅していくマクベスの運命をいかに描くか。マクベス役のブレンデルら強力な出演者、スタッフとの共同作業で、オペラに新たな扉が開かれます。
ものがたり
11世紀のスコットランドマクベスとバンクォーは森で魔女たちから、マクベスは王になる、バンクォーはその子孫が王位に就くと予言される。野心に燃える妻にそそのかされ王を刺殺したマクベスは、王位を手にするもののバンクォーへの予言が疑心を呼び起こし、バンクォー親子の殺害も企む。バンクォーの息子を取り逃がし、死者の幻影に錯乱するマクベス。一方マクダフは先王の遺児マルコムと共に反マクベスの旗を掲げる。

稽古風景:http://www.nntt.jac.go.jp/season/s226/s226tr.html
舞台写真:http://www.nntt.jac.go.jp/frecord/opera/2003%7E2004/macbeth/macbeth.html

ダム・ウェイター

Bバージョン→Aバージョンの順番で一気に観劇。いかにもスズカツさんらしいダンディズム溢れるBバージョン。ベッドのシーツも化学素材、パイプや鉄剤で出来たやや抽象的&無機質なセットで、いつもは2.5枚目の(失礼)浅野&高橋コンビがひたすら男くさーくダンディに演じるといった雰囲気。「部屋に飛び込んできたベンとガスが対峙した状態でストップモーション」という最後の突き放しっぷりまでいかにもスズカツさん、という感じだ。
一方Aバージョン。こちらはセットもがらりとかわり、煉瓦の壁の地下室にベッドふたつという有機的な雰囲気のリアリズムバージョン。こちらでは2枚目の堤&村上コンビがコミカルにあわてふためく感じの2.5枚目バージョン。完全にAとBで棲み分けを図った感じ。ラストもこちらは「服が汚れたり破れたり、なんだか酷い目にあったらしいガスが部屋に飛び込んできて、驚きの表情のベンと向かい合う。やがて何かを悟って受け入れたようなガスは、跪いてベンにガスの銃を受け入れようとする……」という、一応「何らかの解釈が加えられている」という展開になっていた。これだと一応Bバージョンより若干、色々裏ストーリーを想像しやすくなってる気がする。
まーなんといってもAバージョンは運良く2列目で見ていたので「二枚目ふたりをこんな間近で見られるなんて贅沢!」な気分でいっぱいだったのだけど。しかしハロルド・ピンターの作風を知らずに見に来たお客さんは最後に「???」な状態になっていた人も多かったようだ。特にBバージョンでは終演後にそんな声が多かったような……。

http://www.siscompany.com/03produce/07dumb/index.htm
翻訳:常田景子/美術:松井るみ/照明:笠原俊幸/衣装:伊賀大介/音響:井上正弘/舞台監督:二瓶剛雄/プロデューサー:北村明子
〈Aバージョン〉

〈Bバージョン〉

【公演概要】
一昨年、ニール・サイモンの傑作コメディ「おかしな2人」を男女2バージョンで交互上演し、同じ展開の戯曲を「男と女」の世界観を通して表現することで、全く違う手触りの舞台を生み出したシス・カンパニーが、またまたエキサイティングな企画をお届けします。今回は、英国の劇作家ハロルド・ピンターの初期の代表作にして不条理劇の古典とも言うべき「ダム・ウェイター」を取り上げ、キャスト・演出家ともに魅力的な顔ぶれのWバージョンでその世界に挑みます。シニカルな笑いの中に底知れない哀しさが漂うピンターの世界・・・・・。「不条理」という言葉でくくられて終わってしまいがちのピンター作品ですが、その世界は哲学的な要素からボードビル的な楽しさ等々、演劇のあらゆる要素が凝縮されたウェルメイドな世界ではないかと考えています。その代表作とも言うべき「ダム・ウェイター」は、これまで海外はもちろん日本でも古くから、多くの演劇人が挑戦してきた作品です。

そして、その公演の数だけ色々な自由なアプローチの解釈や様々な表現の世界が存在し、そのどれもが特別でユニークな世界を舞台上に展開してきました。今回、私たちも自由なアプローチでその切り口を大胆に広げ、一度の機会に2つの入口を設け、観客の皆さまに2つの世界を体験していただくことで、ナマの舞台の自由な面白さを味わっていただこうと、この公演を発表いたしました。
それぞれの出演は<Aバージョン>堤真一村上淳、<Bバージョン>浅野和之高橋克実、という、舞台・映像の両面で人気と実力を誇るメンバーたち。そして、演出を手がけるのは、Aバージョンは、自転車キンクリーツカンパニーを中心に優れた演出手腕を発揮、近年、小劇場から新橋演舞場での「おはつ」まで、幅広く活躍する鈴木裕美。Bバージョンは、ザズウシアターを主宰し、最近では「欲望という名の電車」「ベント」「リンクス」等、演出作品が目白押しの演出家・鈴木勝秀が担当し、この不思議な地下室での物語を、二人それぞれの視点から、各バージョンの役者たちのテイストを存分に盛り込んだ新しい世界に作り変えていきます。 登場人物二人だけの濃密な劇空間が創りだす不思議な世界。ナマの舞台ならではの臨場感に、新たなアプローチで挑みます! シス・カンパニーがお届けする『ダム・ウェイター Wバージョン』にご期待ください!

【Story】
地下室に男が2人。殺し屋ベンとガスは仕事の指令を待っていた。すると突然、ダム・ウェイター(料理昇降機)がガラガラと降りてくる。中には料理の注文が書いてある一片の紙切れ。彼等が持っている限りの食料を送り込むと、また何度も料理のオーダー表を運んでくるダム・ウェイター。彼等のボスは、2人に何をやらせようとしているのか。どんどん奇妙な状況に追い込まれていく2人。。。。。そして、意外な結末がベンとガスを待っている。。。。。