これから読むSF

Elvis the King

うおっ、SF日記アンテナから人がけっこう来てるんですね。じゃあSFの話でも。
去年あたりからSFを英語で読み出して、最近は小説はSFしか読んでないや・・・。いま積読になってるのは

  • RUDY RUCKER, "SEEK!"
  • RUDY RUCKER, "GNARL!"
  • RUDY RUCKER, "Saucer Wisdom"

"SEEK!"はラッカーのエッセイをまとめたもの。サイバーパンクやディックについてや、人工生命のお得意の話など。ラッカーの写真がけっこう収録されている。"GNARL!"は短編集成。"Saucer Wisdom"は「トランスリアル」自伝の最新版。人生の92年から97年までに対応。UFOに連れ去られ未来に行って来た(と称する)男から未来の話を聞くといった感じのストーリー。ラッカー自筆の珍妙な絵を多数収録(ラッカーの絵についてはここを参照)。
ラッカーは今年の始め読んでから、日本語になってるほとんど全部の作品を読むほどファンになってしまった。基本的にどの作品もハズレなしで面白い(『フリーウェア』は微妙か、長いし)。特に『ソフトウェア』と『ウェットウェア』がお気に入り。『ソフトウェア』はちょうどゲーデルの本(これはいい本だ! ISBN:406149466X)を読んだばかりだったので、ゲーデルのギブス講演での帰結(「人間精神はいかなる有限機械をも上回る」)をそんな単純な方法で回避かよ! と笑わされた。でもそれが例のラッカー哲学につながっていくところは上手い。『ウェットウェア』のほうは、たいていストーリーとかを全く重視せず(民話をそのまま借りてきたり)、結末もアッサリスッパリしたラッカーに珍しく感動の大団円。ただ僕がバロウズ好きなため、バロウズをモデルにした主人公の境遇に必要以上に感情移入した可能性もある。「本来の栄光につつまれたバロウズ」といった感じで。

  • NORMAN SPINRAD, "Bug Jack Barron"

名のみ高いスピンラッドのカウンターカルチャーSF。ここムアコックあとがきを見て読みたくなった。そのあとがきはちょっと訳したなあ。ニューウェーヴの黄金時代。元バークレーの運動家、黒人からはブラザーと挨拶され、ブロンドのカルフォルニア・ベイブが群がるクールでヒップなジャック・バロンが冷凍睡眠にかかわる億万長者の邪悪な陰謀を嗅ぎとり、自身がホストを務めるトーク番組"Bug Jack Barron"でその陰謀を暴かんとすヒッピードリームを凝縮したような話(一文あらすじ)。ただ当時のカルチャーに通じてないとよくわからないほのめかしが多いような。50ページぐらいで止まってる。

  • JACK WOMACK, "Random Acts of Senseless Violence"
  • JACK WOMACK, "Going Going Gone"

タイミングが悪かったのか、ジャンル的な波に乗れなかったのか、圧倒的作品なのにも関わらず知名度が低い不遇なジャック・ウォマック。倉田タカシさまによる素晴らしい質と量を誇る紹介サイトを読んで、間髪入れず復刊ドットコム投票するべきだ*1若島正による解説も必読。個人的には黒丸尚訳の最高傑作はギブスンではなく、このウォマックの『ヒーザーン』・『テラプレーン』だと思っている。シリーズ最高傑作であると思われる処女作"Ambient"の黒丸訳が出なかったことが返す返すも悔やまれる。といいつつ上2つは未読。"Random acts"は『アンネの日記』を意識した形式の少女の日記なんだけど、絶対ひどいことが起こるのがわかってるので辛い。子どもにひどいことが起こるのは辛い。他の長編は読了済。あと2chウォマックスレもすごいよ。洋書を今まで読んだことがない人が手を出すぐらいウォマックは魅力的ということですね。つうかウォマックはもう書かないんだろうか・・・

  • JG BALLARD, "The Complete Short Stories"

バラードは存在的に好きにならねばならぬような強迫感もありつつ、いまいち乗りきれない。長編もいくつか読んだが、「エロい女医がいつも出てくるような・・・」とかそんなことしか思い出せない。近作の2つは富豪のファイトクラブみたいな話だった。いやまあ、それは言い過ぎだし、つまらないわけではないのだが。一番気になってる『夢幻会社』を早く読むべきだな。しかし書評(『J・G・バラード千年王国ユーザーズガイド』ISBN:4826990367)は超常的な巧さ。あんなものが普通の新聞に載ってたとは正気を疑う。とりあえず間を取って全短編が入ってるやつを買った。1200ページぐらいある。

  • BRUCE STERLING, "Heavy Weather"

これを読めば手に入るスターリング作品は全部読んだことになる。しかし粗筋からあんま魅力を感じないんだよな。未訳の作品で一番面白かったのは"Zeitgeist"。「小さな、小さなジャッカル」・「中絶に賛成ですか?」などのレギー・スターリッツが主人公。各短編の登場人物(ロシア人ホクロフとか)もほぼ全員再登場。あんま主人公に魅力がないスターリング作品だが、スターリッツは最高。あ、雰囲気としては「小さな、小さなジャッカル」のようなアホ・ポリティコ=エコノミックな話が長篇でたっぷりと。ポモ的ヨタを交えつつ。

  • SAMUEL DELANY, "Empire Star/Babel-17"

エースブック(だっけか)形式の2作品合本。表から読むと『エンパイア・スター』、裏から読むと『バベル17』になってる(逆でもいいが)。『エンパイア・スター』のほうは読んだ。ディレイニーは別に難しいこと考えずに普通に読んでかっこよすぎるスペオペなんで誰もが読むべきだ。「シリンクス? アルビノ? これは何の象徴だ?」そんなことは考えない方が幸せだった。でも"Dhalgren"は嫌な予感がするので手を出さない。

*1:すみません、こんなこと言いつつ自分が投票してないことに気づきました。いや前に投票しようとしたんですが、登録に住所とかやたら個人情報が必要なことがわかり、ふざけんなと思い途中でやめたんでした。脳内で投票したことになってた・・・。これから投票しますので勘弁してください。・・・した。